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「オーパス・ワン」というワインをご存知ですか?
オーパス・ワンは、アメリカ・カリフォルニア州の最高級赤ワインとして、愛好家の間では知らない人がいないほど有名なワインです。
実はこのワイン以外にも、アメリカには素晴らしいワインがたくさんあるのですが、なぜオーパス・ワンだけがここまで有名なのでしょうか?
実はオーパス・ワンは、ただ味が美味しいというだけでなく、誕生から様々なストーリーを生み出し、
新たなワインの世界を開拓して、歴史に金字塔を打ち建てたワインとされているからです。
そこで今回は、オーパス・ワンがどういうワインなのか、そして誕生から現在に至るまでにどのような逸話があるのかを知ることで、
ここまで有名になった理由を見ていきたいと思います。
「オーパス・ワン」はどんなワイン?
まずは「オーパス・ワン」がどのようなワインなのか、簡単に見ていきましょう。
「オーパス・ワン」とは、アメリカ、カリフォルニア州のナパ・ヴァレーで造られる赤ワインです。
一般に初めて販売されたのは1984年からで、ワインの歴史が8000年あることを考えると、まだ最近誕生したばかりのワインと言えます。

生産地:アメリカ/カリフォルニア州/ナパ・ヴァレー
造り手:オーパス・ワン・ワイナリー
発売開始の年:1984年
ブドウ品種:カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルロー、マルベック、プティ・ヴェルド
(※年によって、使われるブドウ品種の割合は変わります)
このワインの特徴は、フランスとアメリカという異なる国のトップクラスの造り手が、手を組んで手掛けたジョイントベンチャーだということです。
(※ジョイントベンチャー:複数の企業が共同で出資して起ち上げた新事業、合弁企業)
「オーパス・ワン」はワインの世界を変えた?!
後で説明しますが、オーパス・ワンは、発売されるやいなや大成功を収めたワインであると言えます。
このワインの成功によって、これまで通説だった
「フランスのボルドーやブルゴーニュなど、ヨーロッパの限られた地域でしか優れたワインは造れない」という固定概念が覆されました。
さらに「優れたブドウと生産者によって、新しい産地からでも優れたワインを造り出すことは可能」で、
「その新しい産地で、誰でも自由にワインビジネスに参入でき、ワインの美味しさを競うことができる」
という考え方が通用することが証明されました。
このオーパス・ワンの成功によって、ジョイントベンチャーによって造られるワインが世界的に増え、これ以降、
特にヨーロッパ以外のワイン産地(=ニューワールド)が開発され、新たに多くの優れたワインが生み出されていくことになります。
ボルドー、ブルゴーニュ、そしてニューワールドのワインについては、以下それぞれの記事で詳しく紹介していますので、参考にしてください。
ボルドーワインとは?まずは知りたい特徴や格付け、オススメを紹介
ブルゴーニュワインはどんなワイン?特徴や主な産地、オススメも紹介
ニューワールドのワインって何?嬉しい特徴と魅力やおすすめを紹介
「オーパス・ワン」成功までのストーリー
オーパス・ワンは、立ち上げからカリフォルニア最高級ワインとまで言われるまでになった現在に至るまでに、象徴的なストーリーがあります。
そのストーリーは、まさにワインの世界でアメリカンドリームを掴んだと言えるでしょう。
ここから、それを少し見ていきましょう。
「オーパス・ワン」誕生まで
実はオーパス・ワンは、ワイナリーが立ち上がる前から大きな関心を集めたワインでした。
オーパス・ワンは、フランスのボルドー地方を代表する1級シャトーの一つ「シャトー・ムートン・ロスチャイルド」を所有するロスチャイルド家と、
カリフォルニアワインを発展させた先駆者で、カリフォルニアワインの父とも呼ばれる造り手の「ロバート・モンダヴィ」氏が手を組んで、
生み出されたワインです。
2人ともフランスとアメリカそれぞれで、当時も今もワインの世界をけん引している人物です。
そんな2人が「妥協を許さず品質を追求した、他に類を見ない1本のワイン」を求めて着手したプロジェクトが、このオーパス・ワンでした。
オーパス・ワンに取り組むそもそものきっかけは、1960年代まで遡ります。
ロスチャイルド男爵がカリフォルニアで見出した可能性
物語は、当時ロスチャイルド家のオーナー、フィリップ・ド・ロスチャイルド男爵が、カリフォルニアを旅行したあたりから始まります。
1960年代当時は、世界のワイン市場にカリフォルニアのワインがほとんど流通していなかった時代ですが、
フィリップ・ド・ロスチャイルド男爵は、旅行でカリフォルニアを訪れた際に、その気候の素晴らしさに強く感銘を受けたそうです。
なぜならその気候は、ブドウが成長する春・夏・秋は暖かく天気のよい昼と涼しい夜が続き、気温は一日の中で10~12℃と寒暖差が出る環境。
この気候がブドウにとっては最適で、造られるワインは、コクがありフルーツの風味が凝縮したしっかりした味わいに仕上がるそうです。
そして、ブドウの成長が休止期に入る冬に雨が多くなる気候は、春にブドウの芽が出るまでたっぷりと水分を蓄えることが出来ます。
実はこの気候は、フランス・ボルドー地方においてグレートヴィンテージのワインを造り出す条件を満たしていて、
ワイン造りには最高の環境だと言われています。
(※グレートヴィンテージ=ブドウの作柄が大変いい年、つまり最高品質のワインが生まれやすい年のこと。)
フィリップ・ド・ロスチャイルド男爵は、伝統あるシャトーのオーナーでありながら、カリフォルニアという新しい土地に可能性を見出し、
カリフォルニアでのワイン造りをするという取り組みを始めるため、ワイナリーの建設に向けて動き出します。
その中で、カリフォルニアで最良のパートナーを探していた所、ロバート・モンダヴィ氏の名前が挙がったそうです。
ロスチャイルド男爵とモンダヴィ氏が手を組むまで
そして、1970年にロスチャイルド男爵は、ハワイのある会合にロバート・モンダヴィ氏を招待し、こう提案しました。
「あるワインに興味があるのだが…。カベルネ・ソーヴィニヨンだ。どうだろう。何らかの形で一緒にできることはないだろうか。」
ロスチャイルド男爵自身は、自身が所有するワイナリー「シャトー・ムートン・ロスチャイルド」で、
カベルネ・ソーヴィニヨンを主体とした偉大なワインを造っており、その評価もボルドーワインでトップクラスの造り手です。
つまり、カベルネ・ソーヴィニヨンを知り尽くしている人物が、さらにそれで挑戦をしようと持ちかけてきたわけです。
当時、フランスの土地でしかその魅力を引き出せないと思われていたブドウ品種をあえて指定し、アメリカの大地で試してみるということ、
そしてそのパートナーとして、アメリカワインのパイオニア、ロバート・モンダヴィ氏を選んだということに、
ロスチャイルド男爵は並々ならぬ情熱をかけていたようです。
こうした経緯を経て、1978年に2人は「オーパス・ワン」というジョイントベンチャーを立ち上げます。
実はこれは「パリスの審判」の2年後、つまりアメリカワインの実力が認められ始めた時期と重なり、世の中が急速に動きつつありました。
パリスの審判:
1976年、フランスの大物ワイン専門家たちが集まって行われたブラインド・テイスティングにおいて、
当時無名のカリフォルニアワインが、赤白ワイン両部門で最高級のフランスワインを打ち破るという快挙を成し遂げた出来事です。
アメリカ「タイム」誌の記者が、この出来事を有名なギリシャ神話の挿話になぞらえて、
「パリスの審判」という記事をすぐさま発表し、世界中のワイン関係者に衝撃を与えました。
オーパス・ワン、産みの苦しみ
このジョイントベンチャーは、ある意味で壮大な実験でした。
フランス人とアメリカ人が協力をしながら、カベルネ・ソーヴィニヨンという品種を主体に、
新世界であるカリフォルニアの地で、最高級のワインを造ろうというのです。
「オーパス・ワン」とは音楽用語で「作曲家の最初の傑作」という意味です。
この実験が成功するということは、フランスという土地から離れても、
カベルネ・ソーヴィニヨンというブドウ品種から、秀逸なワインを造ることができるということを示唆します。
ムートン・ロスチャイルドというフランス最高級のワインの造り手と、ロバート・モンダヴィというアメリカ屈指のワインのパイオニア。
この二人がタッグを組んで取り組みは、実験の質の高さは折り紙つきで、正当な検証として受け取れるもので、
立ち上げ当初から多くのワイン愛好家の注目を集めていたようです。
目指すワインの味わいは、ボルドー風で、使用する品種もボルドーで使われているカベルネ・ソーヴィニヨンを主体に、
カベルネ・フラン、メルローというブドウを補助的に使用することで設立当初は、これらの3品種でワイン造りをしようと計画されました。
(現在では、プティ・ヴェルド、マルベックという、こちらもボルドーで使われているブドウ品種も使われています。)
こうしてスタートした2人のワイン造り。
フィリップ男爵は、シャトー・ムートン・ロスチャイルドの当時の醸造長ルシアン・シアノー氏をアメリカに送り込み、
ロバート・モンダヴィ氏は、息子のティム・モンダヴィ氏をそのパートナーに任命しました。
定年も間近だった高齢のルシアンは、フランスを一度も出たことがなかったそうですが、
それでも醸造長をアメリカへ送るほど、男爵にはこの取り組みを成功させようとする決意があったようです。
そんな生粋のボルドーワインメーカーであるルシアンと、カリフォルニア生まれのティムの共同作業ですが、最初うまくいくはずがありません。
予定では1日で出来上がるはずだった、最初のワインブレンドはなかなかできず、3日目にしてようやく完成したそうです。
まだかまだかと待ち構えていた人々の前に、ルシアンとティムは2人で腕を組みながら「やっとできた!」と登場したのだとか。
このように、完成するまでに様々な苦労と物語があったオーパス・ワンですが、
ロバート・モンダヴィ氏は「私たちはムートンにアメリカ式ビジネスを教え、彼らは私たちにフランス流のワイン造りを教えてくれた。」
とのちに述懐しています。
ここから、それらの苦労が報われるオーパス・ワンのシンデレラストーリーが生まれます。
「オーパス・ワン」伝説の始まり
こうして、ジョイントベンチャーを始めた翌年の1979年に、早くもオーパス・ワン最初のヴィンテージを造りあげました。
そして、二年間の熟成の後、1981年6月21日に最初のワインが市場にリリースされ、オークションにかけられたのです。
初値は、1ケース2万4000ドル(当時の相場で約400万円)という高値で落札され、カリフォルニアワインとして史上最高価格を記録しました。
1979年と1980年ヴィンテージで記念すべき初リリースを果たし、そこから1本の価格が50ドル以上というカテゴリーを設定されたことで、
アメリカ初のプレミアムワインとして一躍その名を世界に轟かせました。
その後も品質が高められるためのあらゆる努力がなされ、
そしてオーパス・ワンは、アメリカを代表する高級ワインとして、現在に至るまで不動の地位を築いています。
ちなみに最近のヴィンテージは、現在は一本6万円程度で流通しているようです。
「オーパス・ワン」が今でも人気の理由
見てきた通り、誕生してから一気にアメリカを代表するプレミアムワインとして、その名を知られるオーパス・ワンですが、
その人気は今も衰えることがありません。
その理由の一つとして、プレミアムワインと謳われながら、比較的入手しやすいということがあります。
どういうことか少し見ていきましょう。
価格・供給が安定して入手しやすい
オーパス・ワンは、カリフォルニア最高の赤ワインとして高く評価される一方で、
価格と供給が比較的安定しており、プレミアムワインの中では手に入れやすいというのも、人気が高い理由の一つのようです。
どういうことかというと、最近5大シャトーをはじめとする世界の高級ワインは、
中国・インドをはじめとする、世界の新興国富裕層の需要が増えたことによって、毎年価格が高騰しています。
ブルゴーニュの著名なワインに至っては、ワインの生産量が需要に応えることができず、価格の高騰だけでなく入手すら困難になっています。
この状況は今後も続くとされ、伝統的な高級ワインは、近い将来私たち一般人ではとうてい入手できなくなるとさえ言われています。
その点で、オーパス・ワンは生産量と供給が安定しています。
オーパス・ワンは年間生産量が25000ケースと言われており、世界で見ると決して大量生産されるワインではありませんが、
徹底した管理のもとで常に最高品質を保っているワインとして、絶対的な信頼と安心感を得ています。
またオーパス・ワンの販売価格は約6万円と気軽に買えるものではなく、ここ数年は徐々に価格が上がっていますが、
先ほどお話しした通り、高級ワインの多くは生産量が少ないため、プレミアがついて価格が高騰していることに比べると、
オーパス・ワンは、企業努力とブランディング戦略によって、価格と供給が安定した高級ワインとしての地盤を固めていると言えます。
この点も、人気の要因といえます。
日本でも人気が高い「オーパス・ワン」
オーパス・ワンは、日本では1990年前後に広く知られるようになった、と言われています。
当時の日本はバブル全盛期で、ワインの消費量が急激に増えた時代、
この時人気が集まったのが、海外産の高級ワインと言われています。
当時すでにプレミアムワインとして不動の地位を獲得していたオーパス・ワンも、その中の一本として、とても人気が高かったそうです。
特にナイトクラブではシャンパーニュのドン・ペリニョンと並び、赤ワインブームの主役という扱いを受けていました。
その名残で、高級赤ワインといえばオーパス・ワン、というイメージを持っている方は少なくないようです。
その流れは現在も引き継がれており、
多くの著名人や芸能人が愛飲して、セレブの象徴として露出が多いことも人気の理由です。
少しインターネットで検索するだけでも、孫正義氏はじめをする経営者、YOSHIKIさんなどの有名アーティストなど、
多くの著名人がオーパス・ワンを嗜んでいるそうです。
このように日本でもオーパス・ワンは、ワインにそれほど詳しくない方にも、その名を知られています。
「オーパス・ワン」の味を少しだけ気軽に楽しめるワイン
これまで見てきた通り、オーパス・ワンは入手しやすいといっても、決して気軽に飲める価格ではありません。
ただ、オーパス・ワンの味を少しだけ気軽に楽しめる価格のワインが、造り手のオーパス・ワン・ワイナリーから販売されています。
それが、これから紹介する「オーバーチュア」という赤ワインです。
オーバーチュア
「オーバーチュア」は、フランス語で「序曲」を意味する、オーパス・ワンのセカンドワインです。
オーパス・ワン=「作曲家の最初の傑作」という意味なので、それにちなんだワイン名のようですね。

セカンドワインとは?
セカンドワインとは、ワイン生産者において、
最も品質の高い看板ワインを「ファーストラベル」とする一方で、二番手のワインのことを意味します。
つまりオーパス・ワン・ワイナリーの中では、
ファーストラベルは言うまでもなく「オーパス・ワン」、セカンドワインがこれから説明する「オーバーチュア」です。
一般的にセカンドワインは、ファーストラベルの品質・基準は満たしていないとされ、原料のぶどうの段階やワインを造る途中の醸造の段階で、
ファーストラベルと区別されて、名前もラベルも少し変えてワインが造られます。
とは言うものの、元々の生産者の質が高い場合は、セカンドワインでも十分に質の高いワインも生産されており、
セカンドワインだからといって、決してワイン自体の品質が低いというわけではないようです。
この「オーバーチュア」は正にその典型で、セカンドワインでも品質の高いワインだと評価されているようです。
その理由ですが、まずこのオーバーチュアは、原料のブドウがよくできたヴィンテージのみでないと生産されないワインだからです。
また最近では、店頭やネットで販売されていることもたまにありますが、
オーバーチュアは基本的にはオーパス・ワン・ワイナリーだけで販売され、値崩れや品質の落ちたワインが出回らないよう管理されています。
そのため価格が少し求めやすいとはいっても入手が難しいワインで、段々価格も上がっているようです。
まとめ
今回は「オーパス・ワン」というワインが、なぜここまで有名になったか、その歴史を見てきました。
オーパス・ワンは、フランスのボルドー地方を代表する1級シャトーの一つ「シャトー・ムートン・ロスチャイルド」を所有するロスチャイルド家と、
カリフォルニアワインを発展させた先駆者で、カリフォルニアワインの父とも呼ばれる造り手の「ロバート・モンダヴィ」氏が手を組んで、
カリフォルニアのナパ・ヴァレーで生み出されたワインです。
この2人が手を組んで行ったジョイントベンチャーには、様々な苦労と物語があったようですが、
そこから生み出されたオーパス・ワンは、誕生してから一気にアメリカを代表するプレミアムワインとして、その名を世界に知られるようになりました。
オーパス・ワンは、気軽に飲める価格のワインではありませんが、
プレミアムワインの中では、比較的価格・供給が安定しているので、歴史的な経緯も理解した上で、人生で一度は味わいたいワインの一つです。
そんなオーパス・ワン、機会があれば是非とも飲んでみたいですね。
ワインを定期的に届けてくれるサブスクサービスは、店によって全然特徴が違います。
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