ワインの種類や銘柄

ワインは熟成でどう変わるの?熟成原理と変化を解説~当たりはずれは運次第?~

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→「お店によって特徴が全然違う!?定期的にワインが届くサブスクを紹介

ワインが好きな人であれば「熟成」という言葉を耳にしたことがありますよね。

なんとなく高価なもの、長期間保存したもの、おそらく美味しいものってことはわかるけど、

なにが起こっているのかは曖昧な人も多いのではないでしょうか。

今回の記事ではそんなあなたに向け、ワインの熟成は

  • なにが起こっているのか
  • どう変化するのか
  • どう美味しいのか
  • 熟成と付き合う心構え

をお伝えして参ります!

熟成に関する理解を深め、新しいタイプのワインと出会うきっかけにしてもらえると嬉しいです!

熟成の原理

広辞苑によりますと、「熟成」とは「十分に熟してできあがること」とあります。

「飲食品を長時間放置して、よりおいしくすること」というところまではなんとなくわかるのですが、

結局のところなにが起こっているのでしょうか。

まず熟成とは以下3通りの化学的な変化に分けることができます。

微生物、他食品・食器との接触による変化

もともとの飲食品が他の物質と接触することにより変化した状態です。

これらの変化が該当します。

  • 大豆  +  納豆菌 = 納豆
  • 牛乳  +  乳酸菌 = ヨーグルト
  • 米   +  麹菌  = 米麹

ワインを長時間樽の中で保管すると樽の香りが付きますが、これもその一例と言えます。

ちなみに普段発酵と呼んでいる変化もありますが、発酵と熟成に明確な境界線はないようです。

飲食品自体の作用による変化

出典:KSONテック株式会社ホームページ

食品自体が持つ性質によって、もともとの飲食品が変化した状態です。

例えば「お肉」は時間の経過とともにタンパク質が分解されることで旨味が増し、柔らかくなります。

酸化

出典:公益財団法人 ルイ・パストゥール医学研究センター 抗酸化研究室

飲食物は空気中の「酸素」に触れると影響を受け、これを「酸化」といいます。

上のリンゴのイラストのように、品質に悪い影響をもたらすこともあります。

生鮮食品を常温で放置していたら品質はどんどん劣化しますが

真空パックに入れて空気に触れさせなければ劣化の速度はゆるやかになります。

ここまでの話で酸化は悪いことしか起こらないような書き方になってしまいましたが、

実はワインの熟成は、主に酸化による性質の変化のことなのです。

熟成するのは赤ワインがほとんど

長期熟成のワインのほとんどは赤ワインです。

ワインの熟成は一言でいうと「ゆっくりと酸素を触れさせる」ことです。

厳密にはぶどうの果皮や種に含まれる「タンニン」という成分が酸素に触れることによる味の変化が大きく、

これによりワインの酸味や渋みがまろやかになり、繊細で上品、深みのある味わいに変化していくのです。

白ワインは果皮や種を使わず果汁だけで作られているのでタンニンがほとんど含まれておらず、

赤ワインと比べ熟成で得られる恩恵が少ないのです。

これが熟成白ワインの銘柄が少ない理由です。

赤ワインの熟成の方法と、具体的な変化

木樽の中で熟成させる

赤ワインの熟成は「木樽」の中で行います。樽を使う理由は以下のとおりです。

少しずつ酸素に触れさせることができる

急激な酸化はワインの品質にとって好ましくなく、ゆっくりと酸素に触れさせる必要があります。

木樽は酸素を少しずつ浸透させてくれますので、中に入っているワインはゆっくりと、時間をかけて熟成を進めることができます。

ワインに樽の風味がつく

樽の香りがワインに付着し、深みのある風味に変化します。

  • ヴァニラ
  • ココナッツ・ミルク
  • 土っぽい
  • 燻製・焦げ
  • アーモンド
  • キャラメル など

使っている樽によって、実に多彩な香りの変化があるんです。

味わいの変化

酸に触れることにより、ぶどう本来のフルーティーさが減少していきます。

その代わり酸味の角がとれ、舌触りがなめらかになります。

また熟成が進むと渋み成分である「タンニン」が液体と分離し結晶化します。

これを「澱(オリ)」といいますが、澱は樽の底に沈殿し、ワインの渋みがマイルドになります。

これらの変化により、熟成前より落ち着いた、深みのある味わいに仕上がります。

色の変化

出典:ワインプラネット

タンニンは紫色の色素成分でもあるため、熟成が進んだワインはオレンジがかった、透明感のある色になります。

香りの変化

若い赤ワインほどぶどう本来の香りが強く残っていますが、熟成が進むにつれて、

バター、チョコレート、キノコ、皮革、鉛筆など、元の香りからは想像できないような多様な香りに変化していきます。

香りが変化する理由は二つあります。

ひとつは前述した樽の香りの影響。

もう一つはアルコール成分と酸素の化合してできたエステルという香り成分によるもので、

パイナップル、バナナ、メロン、花のような香りを持つと言われています。

あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、ワイン以外でもエステルの効果を活用したお酒は多く、

日本酒の用語では吟醸酒のフルーティーな香りを「吟醸香(ぎんじょうか)」と呼んでいます。

米から作られているはずの日本酒がフルーティーな香りになる理由もエステルの影響なんです。

瓶詰めされた後も熟成は進む

先ほど熟成は樽の中で進んでいくとお伝えしましたが、

瓶詰された後、つまり私たちの手元にワインが届いた後でも少しずつ熟成は進んでいます。

ワインボトルに栓をしている「コルク」はほんのわずかに空気を通しており、

瓶で保管している間もワインは酸素と触れ合っています。

しかし、すべてのワインが長期間保管してから飲んだほうがいいかというとそうではありません。

なかには熟成に向いていないワインもあるのです。

ワインにはそれぞれ「飲み頃」がある

熟成に向いたワイン

熟成に向いたワインの定義は一言では伝えられませんが、基本的には

「渋味」「酸味」が強いぶどう品種(タンニンが多い)から作られるワインが熟成に適していると言われています。

こういったワイン、新酒のころは飲みづらいのですが、長い時間酸素に触れさせることにより

酸味は穏やかに、渋みはまろやかに変化していきます。

そして若いワインにはない、複雑で味わい深いワインになっていくのです。

たとえばボージョレ・ヌーヴォーが作られるぶどう品種の「ガメイ」などは

「渋み」「酸味」が弱いので、熟成には適していないと言えます。

おいしさのピーク

出典:サントリーワインスクエア

熟成に向いたワインでも、熟成を続ければ美味しくなり続けるというわけではありません。

ワインの品質はまるで生き物のように変化し続けており、飲み頃を過ぎれば酸化が進みすぎて逆に品質は劣化していってしまいます。

このような状態を「枯れたワイン」と表現します。

「極端に酸っぱくなる」「お酢のような匂い」「サビのような匂い」「鉄や血のような匂い」といった変化が生じ、

一言で言うと不味くなります。

自宅で熟成させて飲むつもりであれば、店員さんにいつ飲み頃を迎えるのかを聞いておき、忘れないようにしましょう。

【心構え】熟成ワインに安定を求めてはいけない

熟成ワインは若いワインにはない深い味わいがあります。

うまく「品質のピーク」に当たることができれば、それこそ感動と言える体験が得られると思います。

しかしワインショップのソムリエなどプロフェッショナルと言われる人たちでも、

熟成ワインの飲み頃を正確に捉えることは容易ではありません。

例えば「同じワイン」「同じタイミングで瓶詰め」「同じ場所で」「同じ期間」保管したとしても、同じ味にはならないのです。

不確定要素は「コルクの個体差」

ワインの熟成のバラつきを生む最も大きな要因はコルクの個体差です。

コルクは「コルクガシ」という木の樹皮を粉砕して固形化したワインボトルの栓ですが、

一つ一つその密度が違うのです。

そのため通気性に差が生じワインが酸素に触れる量が変わります。

これがワインの熟成速度のばらつきの原因なのです。

同じ熟成ワインは世界に二本とありませんし、評判を信じて購入したワインが必ずしも「当たり」とは限らないのです。

ハズレてもOKの精神でチャレンジ!

熟成ワインは高価なものが多く、そのうえ冒険の要素もあります。

うまく品質のピーク時に当たることができるか

その上で自分の好みに合うのか

飲んでみるまで結果はわかりません。

でも、だからこそ良い出会いを手にした時の感動もひとしおなんです。

熟成ワインを購入するときには専門店でソムリエのなどのプロフェッショナルに飲み頃や適切な保管温度・方法などをよく聞き、

そのうえで「最悪ハズレても勉強!」という寛容な気持ちでチャレンジしてくださいね。

まとめ

  • 熟成は主に酸素に触れることによる味、香りの変化
  • 熟成ワインの多くは赤ワイン
  • 「タンニン」が液体と分離し、味がまろやかになる
  • 香り成分「エステル」と樽の影響で風味が変化
  • ワインには飲み頃があり、過ぎれば品質が劣化する
  • 熟成に不向きなワインもある
  • 熟成ワインはハズレを引いてもOKの精神で!

今回の記事では、ワインの熟成についてお伝えしてきました。

最後は少し脅かしてしまいましたが、

私がはじめて長期熟成のワインを飲んだとき(そのときは「当たり」でした)はそれまでにないワインの体験でした。

まるでミルクやクリームのようなまろやかさ、芳醇な香りなどは若いワインにないものでしたし、

そのワインが長い年月をかけて見てきたこと、聞いてきたことを味わっているような気持ちになったことをよく覚えています。

当たりはずれはありますが、今までにないワインとの出会いを求めているのであれば、

ぜひ熟成したワインにチャレンジしてみてください!

素敵なワインライフをお過ごしくださいね。

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